1. 『Forbidden Vibe』
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『Forbidden Vibe』(1995)1995
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Review

-ジャケットが…-

この2ndには、スロウがたくさん詰まっていると知ったのは、印南敦史さんの『Juicy2』だった。解説を読みながらジャケットを確認…。ここで購買欲が減少してしまったのは事実である[*1]。とはいえ、その中身が気になる…このギャップ理論に見事に気持ちをひっくり返されたことを覚えている。

この2ndを1stより先に聴いたからだろうが、ヒップホップ感を色濃く感じるものではなく、妖艶な、淫靡な雰囲気が張り巡らされている。

-地味と言われますが…-

前作ではバリー・ホワイト(Barry White)のカヴァや、アーニー・アイズレー(Ernie Isley)を招いたりと、話題性があった。これはおそらくドクター・ドレ(Dr.Dre)の人脈によるものだろう。しかし、今回はセルフ・プロデュースが中心。それが理由となり、本来の自分たちがやりたい音楽=R&Bに近づいたのではないだろうか。結果として、それが良い方向に働いた。とはいえ、そこには良き理解者が必要であった。

-バトルキャットとの相性は抜群-

そのメンバーの気持ちを汲んだのが、プロデュースを共にしたバトルキャット(Battlecat)[*2]である。彼が手掛けた②「Mr.Go Down」の完成度の高さが際立つ。おそらくクリス・テイラーの発案であろう電話の発信音から始まり、 怪しさの一歩手前のループ音に、ハイトーン~テナーのルーベン・クルーズの声が絡み合う。そして間奏のマイク・リンの語り。低い声がヴォーカルとの輪郭を露わにし、ボコーダーの谷に滑り落ちる。これこそがこの3人のために生まれた楽曲なのではないだろうか。

⑩「Three Honeys」もバトルキャットによるもの。これは1stからの流れとも言えるようなミディアムだが、明らかにメロディが良く、それをごまかすようにサビで悪ぶる。 現在もシーンに残るバトルキャットのキャリアの始まりの部分になるのだが、ヒップホップ寄りに居を構えつつR&Bを構築するという、この部分があるから生き残れるのだろうと改めて感じる。ちなみにバトルキャットは、⑤「Hideaway」⑨「Under My Spell」もプロデュースしているのだが、これらも佳曲である。

-セルフ・プロデュースの作品では-

テイラーによる⑫「Holdin' Out For Love」も聴かせる三連系スロウ。出だしは正統派のスロウを連想させるのだが、後半からグッと熱くなる(個人的にはもっと熱くても良いと感じてしまう)。音数の少ない、それでいてしっかりとソウルするようなテイスト。なぜか久保田利伸がカヴァした「In The Mood」[*3]を思い出してしまう。

-変わりゆくブラックミュージックシーンにおいて-

バトルキャットはシーンに残り、テイラーはこの先、表舞台にあまりたっていない。どうやらテレビの音楽を手掛けていたらしいが、それが非常に歯がゆいというか…。Dr.Dreやスヌープ(Snoop Dogg)の活躍を考えると、R&Bをやりたかったというテイラーは、シーンの影響をもろに受けた実力者なのだろうと、少し寂しく思ってしまう。

(2020.04.20)

[1]ジャケットをみて購買欲が下がるシリーズは多々あるものの、このジャケットは結構衝撃的だった。とはいえ、ウェイン・マーシャル(Wayne Marshall)『99°&Rising』を越えるものではなかったが…。
[2]ケニ―・ラティモア(Kenny Lattimore)やブライアン・マックナイト(Bryan McKnight)などの正統派からヒップホップまでを自由自在に手掛け、時流をつかんできたプロデューサー。最近ではタキシード(Tuxedo)までミックスを手掛けており、まだまだ現役である。
[3]『THE BADDEST~Only for lovers in the mood』収録。

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