1. 『Peace Beyond Passion』
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『Peace Beyond Passion』(1996)1996
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Review

-鳥のように自由に-

有名な話だが、彼女の名前はスワヒリ語で“鳥のように自由に…”という意味らしい。彼女の作品を聴いていると、なるほどと大きくうなずける。そんな“自由人”ミシェルの2ndである。

-1996年、グランプリ-

正直な話、この作品が「ADLIB」誌上で1996年グランプリをぶっちぎりで受賞するまで、彼女のことは、存在すら知らなかった。慌ててHMVへ。そして、聴く…。今でもこの時の衝撃は忘れられない。背中に寒気がはしる。ジャンル分けが無意味に感じた瞬間だった。「ヒップホップなのか、歌ものなのか。はたまたジャズなのか…」そんなことはどうでもよくなるほど、とにかく聴き込んだことを思い出す…。何度聴いても深みのある音、発見のある作品だと感じていた。

-タブーに触れる-

その作品は、テーマが2つに分かれている。“聖書、同性愛”などの前半と、“愛”の後半である。とにかく前半は、音はもちろんのこと、詞もインテリ感たっぷり。詞からはじめに読んでしまうと、非常にかしこまって聴いてしまうかもしれない。②「The Way」⑤「Leviticus:Faggot」は、ともに神がテーマ。“人々はあなたのことを道だ、光だといいます”ということを、2曲とも詞に散りばめ、伝えている。ちなみに、は同性愛の話。その母親は「どうか彼をお救いください」と祈る。あえて、差別についてふれ、正しく理解させるために、興味を持たせようとする姿が素晴らしい。

-テーマが変わる-

後半は一転して愛について。⑧「Who Is He And What Is He To You」というビル・ウィザース(Bill Withers)のカヴァーが折り返し地点となっている。⑨「Stay」⑪「A Tear And A Smile」は、ちょっと幸薄い女を演じきる。この沈んだ曲調が彼女の得意とする深いコクと言える部分だろう。ベーシストならではの味付けになっている。

-ベテラン・ミュージシャンも唸った!-

デヴィッド・サンボーン(David Sanborn)が当時、「最近のお気に入りは…」といってこのアルバムを挙げた記事を読んだことがある。それくらいミュージシャンに愛されているミュージシャンであることは言うまでもない。こののち、ベーシストとしてだけでなく、多数の作品に関わっていく彼女の職人魂が、人を惹きつけるのだろう。

(2005.12.08/2015.03.01)

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