1. 『My Turn - My Time』
  2. MARK MIDDLETON
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『My Turn - My Time』(2000)2000
mario_winans-story_of_my_heart

Review

-不遇-

ブラックストリート(Blackstreet)最大のヒット作である『Another Level』からグループに参加。しかし、目立った存在ではなかった。かつ、金銭トラブルによる脱退劇、再びタッグを組んだ4thが数字を出せず...。この脱退&再合流の間にリリースする予定であった本作である。クインシー・ジョーンズ(Quincy Jones)のクエストからリリースであり、盤石と思われたこの作品。まさかのお蔵入りとなってしまった。

-爽やか路線を推すことになるとは-

グループを彷彿とさせるバウンシー寄りの②「On The Dance Floor」③「Me & Your Lady」から肉厚感たっぷりのなかに、マークのテナーヴォイスが溶け合うところを感じるところから始まる。グループ風味付けの一番わかりやすい形が④「Really Need」になるだろう。どこか切ない、むせび泣くような歌声が印象的である。

それに続く爽やか路線の⑤「Sail Away」が出色の出来!アコースティックギターで歌っていくソウルスタイルは、エロさを抑え気味で、筆者的に通常白眉の1曲に選びづらいのだが、これは迷うわずに一票を投じたい。サビのコーラスとやさしいハーモニーに素直に心を奪われた。

また、同等にド直球のピアノ・バラード⑦「I Do」も熱い。後半のロングトーンを軽々と歌いあげるマークの喉が堪能できる。実際にこの曲はアメリカで人気を博したようで、結婚式に選曲する人も少なくないらしい。

続く⑧「My Baby's Gone」も同様に聴きごたえのあるスロウ。サビからぐっと盛り上がっていくところ、後半はさらに半音上がり、コーラスの中に浮かび上がるテナーヴォイスがたまらない。

ー楽曲にみえた、あれこれー

切ない系ミディアム⑪「Date With Love」に続く⑫「I Can't Wait」はBメロからモンテル・ジョーダン(Montell Johdan)「What's On Tonight」 [1]を彷彿とさせる音作りになっており、スロウ好きは大好物のはず。地味なメロディ・ラインでありながらも、こういう仕掛けをしているところにニヤリとしてしまった。 ちなみに続く⑬「Forever You & I」ではイントロにメスローン(Methrone)が見えてしまった。

時流を意識したようなアップ⑭「You're Not Ready」でさえ、しっかりとカッコイイ。ヴォーカルを活かしてというわけでもないのに、これはアリだなと思わせてくれた。

ーお蔵入りしたから、ではなくー

いずれにしても、本当にすべての楽曲のレベルが高く、ひれ伏した。「お蔵入りした作品は非常に出来が良く、もったいない。」この手の話は多数あり、その実はわからない。人は手に入りずらいものを過大評価しがちだからである。どこまで本当なのだろうか。そんな斜めから物事を見る筆者だったわけだが、これは…。ブートでもいいから手に入れたいと思わせてくれる内容だった。

(2020.02.16)

[1]モンテル・ジョーダンの珠玉のバラード。1996年『More...』収録。

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