1. 『Keith Sweat』
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『Keith Sweat』(1996)1996
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Review

-セルフ・タイトル-

5枚目にしてセルフ・タイトルを付けた。それゆえに自信作だったのだろう。その自信が確信になるほどの素晴らしい出来である。

キースの最高傑作との評価を様々な媒体で目にするが、筆者もそのとおりだと思っている。キース自身の、というよりも90年代に発表された世界のR&B作品の中でも屈指のものであることを否定される方は少ないだろう。林剛さんも、90年代の3枚を選んだ際にこちらを選盤されていることからも、間違いないことがよくわかる。

-求められる物とキースの世界観の一致-

これまでアルバムの先行シングルは決まってアップだった。しかし、ここでは① 「Twisted」を選んだ。彼がのちにプロデュースをすることになるガールズ・グループカット・クロース(Kut Klose)が絶妙に絡んでくるミディアム・スロウ。ビルボード100でも2位を記録し、38週もチャートに残っていたこの曲はキース最大のヒットとなった。

さらに次のシングルは甘すぎるスロウである⑪「Nobody」。これもカット・クロースからアシーナ(Athna Cage)がフィーチャーされており、いかに相性が良いのかがわかる。こちらもビルボード100で3位を記録。この2曲により、キースが何を求められているかが完全に明らかになった。

それにしても本当に2曲とも素晴らしい。どちらが好きかなんて野暮であり、シーンによって異なると答えるしかそのすべは見つからない。個人的にビルボード100のチャートアクションと楽曲としっかりとリンクすることはあまりないと思っている[*1]のだが、2曲も続けてというのが、記憶に少なく、(あまり使いたくない表現だが)奇跡と言える。

-それだけじゃない、佳曲群-

当然だが、アルバムとしても安心して聴ける楽曲がそろっている。②「Funky Dope Lovin'」ではおなじみジェラルド・レヴァート(Gerald Levert)のほかにアーロン・ホール(Aaron Hall)まで参加。LSG前夜のLSA??とでも言いたくなるほど、ボトムの利いたヴォーカル合戦がくりひろげられる。
 日本人なら気になるタイトルの③「Yumi」や、トニーズ(Tony Toni Toné)とは同名異曲の④「Whatever You Want」[*2]など、②⑪を好む人なら否定する人などいないのではないかと思いたくなるスロウ。ここまでの前半4曲だけでも充分の内容である。

⑤「Just A Touch」⑥ 「Freak With Me」でダンスの香りを残しながら、⑦「Nature's Rising (Interlude)」で一度区切りを。そして⑧「Come With Me」では、御大ロナルド・アイズレー(Ronald Isley)を迎えた夢のエロ対決が用意されている。当然ヴォーカルスキルとしてはロナルドに敵うはずもないのだが、キースのプロダクション能力に最高のヴォーカリストを迎えたという仕上がりで、メエメエ声ともしっくりと溶け合っている。[*3]
 これに続く⑨「In The Mood」⑫「Chocolate Girl」も地味ながらアルバム全体の底上げに尽力。これらに挟まれるの甘美で繊細な世界を支えている。

-証明されたキースの実力-

アルバムは、POPで5位、R&Bチャートは言うまでも無く制覇している。前2作のチャートアクションは地味だったが、今回はしっかりと復活。翌年発表されることになるのLSG1st制作に向かうための意欲となったに違いない。

(2005.11.03/2021.06.18)

[*1]R&Bチャートは別物。やはりPOPチャートは様々なジャンルが入るのでなかなか…。見識が狭い筆者の責任かもしれない。
[*2]2rd『The Revival』に収録。名曲「It Never Rains(In Southern California) 」の次に配置されており、続けて聴きたくなる。
[*3]このアルバムの1月ほど前にリリースされたアイズレーズ(The Isle Brothers featuring Ronald Isley)の新譜『Misson To Please』に「Slow Is The Way」を提供。コーラスも参加していて、兄弟関係と言えそうな2曲である。

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