1. 『Never Let You Go』
  2. JESSE CAMPBELL
  3. artist
  4. privatesoulmusic
『Never Let You Go』(1995)1995
jesse_campbell-never_let_you_go

Review

-ナヨ声は大好物なのです-

誉め言葉としての“ナヨ声”。ラファエル・サディーク(Raphael Saadiq)ミントコンディションストークリー(Stokley Williams of Mint Condition)のような高音域のテノール声を指すことが多いが、このジェシもそれに当たる。しかし、前出の2人と比べると圧倒的に歌が巧い。いわゆる“ザ・ヴォーカリスト”。そんなジェシがセキュラーで残している(今のところ)唯一のアルバムがこれだ。

-シングルの出来が秀逸-

まずはその歌声の確認してみよう。デビューシングルとなった三連系バラードの③「When U Cry I Cry」でみせてくれる表情の豊かさ。歌いだしのビブラートとファルセットを織り交ぜるところや、サビでの伸びやかな声の中にみせる切なさ。この曲が語り継がれていることがよく分かる。また、⑪「Baby, Baby, Baby」ではアダルトに(イイ意味で)ネットリ歌う。特にサビでのエロさ加減といったら…。そんな風に、それぞれの楽曲にあわせた雰囲気で歌えている。そして、各曲ともにイチイチ気がきいた歌い方とでも言おうか、力の入れ具合、出し入れが本当にお見事。紛れも無くヴォーカリストと言えるだろう。この2曲がシングルに選ばれているのも頷ける。

-ミディアム~スロウで統一-

そんな歌力に負けていないのが、珠玉の楽曲たちであろう。全てをミディアム~スロウを並べているところから時代に逆行している…、というか良くこんなのを許してくれたなと思えるほど統一が図られている。

アルバム中で(これでも)一番リズミカルな①「This Time」から始まり、哀愁漂う②「Don't Stop」(福岡県民の筆者は、サビの「Don't Stop」が「moon star」と聴こえてしまい、「え!?月星シューズ!?」なんて思ってしまいました…。)を経て、大バラードの。ここまでですでに引き込まれてしまう。

-丁寧な仕事ぶりが好印象-

ここからは丁寧に聴いていきたい楽曲が並ぶ。オジ・ピアース(Oji Pierce)が手がけた2曲、消えていってしまいそうな繊細バラード④「The Comfort Of Your Man」とソプラノサックスが絡みつく⑤「After The Rain」、ジェシ本人が手がけた、人気のタイトル曲⑥「Never Let You Go」と、起伏が乏しいとは言え、聴き応えのある曲がズラリ。その流れで最後まで突き進む。その中でも印象的だったのは前出の⑨「Love You Right」⑩「Keep It Slow」はゴスペルへの憧れのようなものを感じ取れるし、は王道ともいえるような、これまた三連系。ジェシらしさを感じ取ることができる。

-戻ってくることはあるのだろうか-

しかし、やっぱり聴いてみて思う。もう一度、セキュラーで勝負してもらいたいと。ゴスペルもいいが、このきれいな歌声でR&Bを聴いてみたい。

(2010.10.31)

List

TOPへ