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『The Collection』(2012)2012
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Review

-家内制手工業-

現在の音楽業界の生産体制を考えると分業制≒“マニュファクチュア”とも言えるだろう。それに対しての言葉として挙げられるのが“家内制手工業”。職人がお家でコツコツ…。そんな匂いが詰まった作品である。ジャケットの印刷も決して褒められるものでもなく、写真も地味…。メジャーからのリリースだと、そちらのほうが逆に期待できるという気もするが、インディではどうなのか…。しかし中身はしっかりと編み込まれていた。

-車ではなく、室内で-

全体的にはスロウ中心の落ち着いた内容。特に夜の帳が降りてからの時間にゆっくりと、落ち着いて聴き入りたい。

ゆったりとしたエレピのリフから始まる①「She’s Here」から深夜の密室を連想させる。そこにあるのは淫靡な空間ではなく、あくまで静寂。この曲で腰を据えて聴く必要がある作品だとわかることだろう。

ミディアムの②「Beautiful Woman」まで心地よい緊張感を感じさせたかと思うと③「Let’s Go Back」はイントロからかわいらしく。決して歌い上げるわけではないカーティスの声になじんだシンプルな楽曲である。

-そろそろ出かけようか-

そう思わせてくれるほどドライブが似合いそうなミディアム④「Love Song」は軽いグルーヴを纏って。ここでも控えめなカーティスのヴォーカルがよく溶け込んでいる。主張せずとも主役は渡さない。そんな声色に惹かれてしまうのだろう。後半に入ってくるクラップの音も温かさを演出している。

-部屋へ戻ろう-

ファンク色の強い⑤「Work It Out」⑥「My Love Is Gone」で悪い男を演じた後は、短いスロウの⑦「Sweetness」。ギャップが大好きな女性陣の指示を得そうな正統派。男性の本気度を匂わせる。

“部屋に帰ろうか…”。

余計な言葉はいらないとばかりに、短くまとめられたバラードに説得力があるのだろう。

部屋へ戻ってからの⑧「Unforgettable」~⑩「Everything to Me」は愛し合うふたり、といったところか。作品としても、この3曲が肝と言えるだろう。シンプルなエレピの音にベースを聴かせ、少ない音数が嬉しいや、思わず「アレンジは柿崎洋一郎さん??」と疑ってしまう、絶妙なヴォコーダーの音色と重ねられたコーラスが絡み合う⑨「I Vow」など、明るい日差しの下では聴けないトロトロのスロウが続く。

その中で最も正統派と言えるはということになるだろう。タイトルからしてもそうなのだが、歌っている世界観もベタベタではあるのだが、こういう歌こそがスタンダードとなり、時空を超えていくのだと思う。

-配信の世界に導いてくれそうな存在-

冒頭に記したとおり、ジャケットのチープさは隠せない。しかし、これだけの良作を届けてくれるのだから、もはや現在はメジャーもインディも垣根はないなと改めて感じた。カーティスの最近作は配信のみのリリースのようだが、そちらの垣根(フィジカルor配信)に戸惑ってしまっている筆者を、ついぞダウンロードの道へ引きずり込んでくれそうな存在。今後が楽しみである。

(2015.11.16)

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