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『Goodfellaz』(1997)1997
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Review

-ファミリー・スタンドが全面プロデュース-

ファミリー・スタンド(The Family Stand)の作品は、どこかロックの匂いが強くて、筆者は正直、得意とは言えない。但し、彼らの代表曲「It Should've Been Me(That Loved You)」(ゴスペラーズのカヴァーでおなじみ!?)は、ソウル度は低くともお気に入りの楽曲となっている。そんなファミリー・スタンドの2人、ピーター・ロード(Peter Lord)ヴァーノン・ジェフリー・スミス(Vernon Jeffrey Smith)がプロデュースしている作品である。

-レニクラだ!-

上記の内容を頭に入れていただいて①「Sugar Honey Ice Tea」を聴くと、なるほど!と思っていただけるのではないかと思う。もろに、レニー・クラヴィッツ(Lenny Kravitz)の「It Ain't Over 'Til It's Over」なのである。あの心地よいリズム感は、おそらくヒットを狙ったもの(実際にデビュー・シングルはこの曲)だろうと余計なことまで考えてしまうのだが、何度も聴いてしまうような、良い意味での中毒性が感じられる。筆者も何度もリピートして聴いてしまっている。

-この音を容認できるかが鍵-

さらにブラック・ロック色を深めてしまうのが③「If You Walk Away」であろう。このアルバムを受け入れられるかどうかは、にかかっていると言っても過言ではないと思う。歌いだしから、まるでジャーニー(Journey)の曲!?と言いたくなるようなロック・バラードなのである。こう書いてしまうと興味が削がれるかも知れないが、前述したファミリー・スタンドがプロデュースしているということを理解して欲しい。これを“ロックを取り入れた新しい表現”ととるか、“ソウルと認められない”ととるかで、意見が二分されることは仕方の無いことだろう。ただ、この楽曲のリプライズ⑫「If You Walk Away (Reprise)」で作品を閉めなくても良かったのではないかと思う。ちなみに⑦「Nothing At All」⑪「Pour Your Love Down」も同様のタイプの楽曲である。

-本人たちはファンク希望!?-

ここまでどちらかというと“ソウル色が希薄である”ことを前面に出してしまったが、本人たちはソウルを愛し、ブラック・ロックの方向性を推し進める気もなかった様子。

「(幼少期は)ダニー・ハサウェイ(Donny Hathaway)、アイズレー・ブラザーズ(The Isley Brothers)、スティーヴィー・ワンダー(Stevie Wonder)、アース(Earth,Wind&Fire)、ゴスペルのジョン・P.キー(John P Kee)、ジェイムス・クリーヴランド(James Cleveland)を聴いていた。」

「僕達は(サンプリングを多用したヒップホップ・ソウルではなく)ファンクを目指しているんだ。」(『ADLIB』1997.6)

と語っているとおり、本当はもっと泥臭いものがやりたかったのではないかと思う。その証拠に④「Hey」ではアイザック・ヘイズ(Isaac Hayes)の「Walk On By」を取り上げたり、メンバーが楽曲作成に関わった⑧「Anytime Will Do」⑩「No Matter」などは彼ら流のファンクを感じることができる。そのなかでもは、出だしから単調なファンクか!?と言いたくなるのだが、サビからの転調がなかなかメロディアスであり、面白い仕上がりになっている。とはいえ、一番ファンクを感じたのは、ファミリー・スタンドの2人が手がけた②「Why You Wanna Flip On Me」というのが皮肉なところ、ではあるのだが…。

-グループとしては-

コーラス・グループ的に仕上げたのは⑨「For Better Or Worse」シンプリー・レッド(Simply Red)を彷彿とさせる、やさしいメロディではあるものの、ポップス寄り。もともと、歌い倒すグループではない。バリトンとテナーの出し入れで聴かせてはくれるが、グループとしての力が発揮されていないような気がする。但し、可愛く仕上げた⑥「Backslidin'」は切な過ぎる雰囲気が似合っており、気持ちを温かくしてくれる。

-もう少し分厚くても良かった-

アルバム全体を聴くと、ともすればUKのグループか!?と思ってしまうほど“ライト”な感覚になってしまった。これは前述の通り、ファミリー・スタンドによるところなのだが…。もう少し“黒寄り”に仕上げて欲しかったと思っている。

(2012.08.27)

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