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『Crucial』(1998)1998

Review

-南部産...ですよね!?-

「え、これがUK産!?」最初の印象はそうだった。アル・グリーン(Al Green)直系のようなハイ・サウンドと若干のざらついた歌いまわし…。確実に“南部印”だと思っていた。それくらいサザン・ソウルの影響をモロ出しにしたアリ(Ali)のデビュー作にして傑作だ。

-ファミリー・スタンドが支えます-

UK産といえども、レコーディングはアメリカで。そのスタッフの顔ぶれを見てみよう。

まずはなんといってもザ・ファミリー・スタンド(The Family Stand)の面々。ディズリー(Des'ree)のアルバムに参加したり、ジャジー・B(Jazzy.B)とも親交があったりと、もともとUKのミュージシャンとのつながりのある彼らは、この作品には不可欠な存在だったであろう。シングルとなった①「Love Letters」ではポップ色を全面に出しながらも、70年代のフレイヴァーを注入。このハッピーな感覚が、なんとなく懐かしさを感じる。またタイトル曲⑩「Crucial」は、カラッとしてざらつきのある、“いかにも”なサザン・ソウル。こういった曲をファミリー・スタンドが手がけたというのは少し意外な気がする。(もちろんイイ意味でのサプライズで。)

-旧友だからできること-

それから全面的にかかわったのが、ウエイン・ヘクター(Wayne Hector)だ。彼はアリとアリウェイ(Aliway)というユニットを組んでいた。よってその作業たるや、ユニットの延長線上にあったに違いない。とくに魅かれたのは②「So In Love」。粘着力のある、アリのヴォーカルを余すところなく発揮させている。特にサビの部分の歌いまわし。この曲は歌の上手な人しか歌ってほしくない!そう叫びたくなるほどの仕上がりになっている。

-ほのかにUKの香りも-

その他、メアリー・J.ブライジ(Mary J. Blige)作品で活躍しているボブ・ブロックマン(Bob Brockman)フージーズ(The Fugees)のブレイクのきっかけを作ったサラーム・レミ(Salaam Remi Gibbs)、そしてキャラクターズ(The Characters)らが参加している。この面子をみると、なるほどUSの匂いがするわけだと思ってしまうわけだが、ひっそりとUKカラーを配色している曲がある。それが⑨「Maybe Today」である。爽やかな初夏向けの1曲に仕上がっている。また、大ネタ「Rising To The Top」をサンプリングした ⑧「Feelin' You」。このへんも思わずニヤニヤさせられるところだ。大ネタといえば、日本盤にはスティーヴィー(Stevie Wonder)のカヴァ⑰「Lately」を収録。ジョデシー(Jodeci)によるポップなヴァージョンも良いが、原曲に忠実なこちらも圧巻。ソウル度ではこちらの方が上と思ってしまうのは筆者だけだろうか。

-そして消息は...。-

結局この濃厚な1枚を残してから、消息が…。どなたか情報をお持ちの方、是非教えてくださいませ。 

(2006.5.12)

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